破産すると財産が処分される?破産財団と自由財産について

自己破産すると、それまで持っていた自分の財産がすべて没収・処分されてしまうと考えている方が世の中にはたくさんいらっしゃいます。

この考え方は、半分正解で半分は間違っています自己破産で自分の財産が処分されることになるのは、基本的に「管財事件」となる場合だけだからです。

自己破産で借金の支払い義務が免除されるのはありがたいことですが、自分の財産すべてが処分されることになってしまっては困りますよね?そんなことになったら、日常生活を送ることもできなくなってしまいます。

しかし、そんな心配は不要です。自己破産が管財事件となり、財産を処分されることになったとしても生活するうえで必要な一定の財産は手元に残されることになっているのです。これが「自由財産」です。

今回こちらでは、この「自由財産」について解説させていただきます。さらに、自由財産を理解するうえで必要となる「破産財団」などについても合わせてご紹介いたします。

自己破産した時に、「どのような財産は手元に残されるのか?」「どのような財産は処分されてしまうのか?」しっかり理解していただきたいと思います。

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この記事の目次

破産制度の概要

「自由財産」と「破産財団」をご説明するためには、前提として「破産制度」に関して理解していただくことが必要です。そのため、はじめに破産制度の概要について解説します。

「破産」という言葉は、一般の方でもある程度は耳にした経験がおありだと思います。しかし、聞いたことはあっても具体的な手続きの内容に関しては、あまり知らない方も多いのではないでしょうか?まずは、基本的な知識として「破産」とはどのような制度なのか、という点からご説明したいと思います。

そもそも「破産」とは何か?

破産とは、返済しきれないほどの借金を背負ってしまった人(債務者)の債務を免除(免責)し、債務者を救済するための制度です。しかしだからといって、債務者が何の努力もせずに債務の免除が受けられるほど、世の中は甘くありません。債務の免除という救済を受けるためには、債務者としても可能な限り債務の返済に努める必要があります。

免責を受ける前提として債務者がすべきこと

それでは、債務者が債務の返済に関してできる、最大限の努力とはどのようなものでしょうか?それは、自分の財産を手放し、債務の返済に充てることといえるでしょう。つまり、債務者は自分の財産すべてを処分・換金し債務の返済に充当することによって、債務者にできる最大限の返済を行ったことになります。これはある意味、債権者に対する債務者の精いっぱいの誠意の現れと考えることができるかもしれません。

そして、債務者が最大限の返済をすることを条件として、それでも返済しきれない債務の残額について「免責」をもらうのです。これによって、債務者の返済義務が免除されることになります。これが「破産制度」の基本的な流れです。

債務の免除を受ける前提として財産が処分される!

破産をする人は債務の免除を受ける前提として、その所有している財産を手放し、債務の返済に充当することが必要です。このため、破産申立人がそれまで所有していた各種の財産は、破産手続によって処分・換金されることになります。そして、そのお金が債権者に債権の額に応じて平等に分配されるのです。そして、このお金では返済を受けられなかった債権の残額部分について、破産申立人は債務の免除を受けることになります。

以上が、原則的な破産の処理方法です。のちに解説しますが、このような方法で処理される自己破産を「管財事件」といいます。

自己破産しても財産が処分されないケースもある!

ところで、ここまではずっと管財事件での扱いをご説明してきましたが、破産の処理方法は管財事件以外にも存在します。それが「同時廃止事件」と「異時廃止事件」です。

破産する人に一定以上の財産がある場合、破産は管財事件とされます。この場合、破産申立人の財産は処分されることになるのですが、これはあくまでも「破産手続」が終始管財事件として処理される場合に限定された扱いなのです。つまり、破産の処理方法が「同時廃止事件」と「異時廃止事件」である場合本来は破産の手続きで行われるはずの「破産手続」が省略され、「免責手続」だけが行われることになるのです

「破産手続」と「免責手続」

破産という手続きは、実はひとつの手続きではありません。裁判所において、ある人の破産が処理される場合、実は2つの手続きが行われることになるのです。それが「破産手続」と「免責手続」です。

「破産手続」とは?

破産する人に一定額以上の財産がある場合、裁判所で破産が処理される方法は管財事件となり、「破産手続」が行われることになります。つまり、破産が管財事件となった場合には、かならず「破産手続」が行われるということです。「破産手続」とは、破産申立人の財産を「取り上げ」て破産財団とし、破産管財人によってそれが換金され債権者にその金銭を分配する一連の手続きのことをいいます。

この手続きが行われる場合には、破産管財人の選任が必要になるなど、費用と時間がかかることになります。

「破産手続」が行われる場合だけ財産が処分される!

上記のように、破産の処理が管財事件となった場合には、原則的な手続きである「破産手続」が行われることになります。このため、破産申立人の財産が処分されることになるのです。

つまり、「破産手続」が行われる場合に限り、財産は処分されることになります。

つまり、自己破産することで破産申立人の財産が処分されることになるのは、破産処理において「破産手続」が行われる場合に限定されるということなのです。

「免責手続」によって債務が免除される!

「免責手続」では、破産申立人の負っている債務の免除を認めるかどうかについて裁判所が判断することになります。その結果、裁判所から「免責許可決定」をもらった場合、それが確定することによって法律上、債務の返済義務が消滅することになります。これによって、めでたく自己破産が成功したことになるのです。

なお、自己破産する場合に障害となるのが「免責不許可事由」に該当するケースですが、実際にはそれに該当する事例でも裁判所による「裁量免責」によって99%以上の事例で免責が下りています

「同時廃止事件」では財産が処分されない!

同じ自己破産の手続きでも、破産する人にこれといった財産がない場合があります。この場合、管財事件と同じような厳格な手続きをしていては費用倒れとなってしまいます。そのため、このような事例では「破産手続」が省略され、「免責手続」だけが行われることになります。そのため、このケースでは破産する人の財産はいっさい処分されることがないのです。

この場合、裁判所は「破産手続開始決定」と同時に「破産手続廃止決定」を行います。つまり、「破産手続」が開始と同時に廃止(中止)されるのです。これを「同時廃止(事件)」といいます。同時廃止事件の場合には、「破産手続」が一切行われないため、破産申立人の財産はそっくりそのまま自分の手元に残すことができることになります。

「異時廃止事件」の場合も財産は処分されない

この扱いは、破産が「異時廃止事件」となる場合も同様です。異時廃止事件とは、破産する人に一定以上の財産があると最初は思われたものの、その後の調査の結果「破産手続」で換価・配当するほどの財産が存在しないことが判明した場合にとられる処理方法です。

異時廃止も最初は管財事件とされる

破産申立人に実際にはあまり財産がないにもかかわらず、破産の申し立て当初において裁判所が、「破産申立人には一定以上の財産がある」と判断することがあります。この場合、その破産の処理方法は管財事件となります。管財事件である以上、裁判所は破産管財人を選任し「破産手続」が開始されることになります。

しかし、破産管財人による調査の結果、破産申立人に財産がないことが判明した場合には、一度始まった「破産手続」が途中で中止(廃止)されることになります。これを「異時廃止」といいます。この場合、実質的には「破産手続」がなされていないと同じ状態であるため、結果的には同時廃止事件と同様、破産申立人の財産は処分されないことになるのです。

破産処理の基本は管財事件

上述のように、破産が同時廃止事件や異時廃止事件となる場合には、破産申立人の財産が処分されることがありません。しかし、これらは破産の例外的な処理方法です。破産の原則的な処理方法は、あくまでも「破産手続」が行われる管財事件です。

破産した人の財産は、原則として破産財団に組み込まれる

破産法は34条1項において、つぎのように定めています。

「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。」

つまり破産した場合には、破産申立人の持っている財産は、日本国内にあるかどうかにかかわらず「一切の財産」が破産財団とされるのです。

「破産財団」とは?

「破産財団」などという言葉を聞くと、大げさで難しそうなイメージを持たれる人が多いかもしれません。しかし、実際はそうではありません。破産財団とは、単に「破産債権者に分配されることになる財産」のことなのです。

つまり、もとをただせば「破産するまでに破産申立人が所有していた各種の財産の集まり」のことを破産財団と呼んでいるにすぎません。破産申立人の所有している財産によって違いはありますが、破産財団には現金、預貯金、不動産、株式、自動車などなどが含まれるのが通常です。

破産財団に組み込まれるのは破産開始決定当時の財産

すでに解説させていただきましたが、自己破産が管財事件とされた場合には、破産申立人が所有している財産は基本的に破産財団とされることになっています。それでは、この破産財団に属することになる破産申立人の財産は、いつの時点で所有している物が対象となるのでしょうか?この破産財団に属することになる財産とは、破産手続開始決定時点で所有している物に限定されることになっています。

つまり、これを反対に解釈すると、破産手続開始決定がなされて以降に取得した財産は、仮にまだ破産の手続きが終了していない場合でも破産申立人は自分の物とすることができるのです。

破産財団は債権者に分配するお金の元となる

管財事件は、この破産財団に含まれる各種の財産をお金に換え、破産債権者に分配する手続きです。自己破産が管財事件として処理される場合、破産申立人の財産は基本的に「破産財団」に組み込まれることになります。このため、それまで自分の自由に使用・処分などができた「自分の物」が自分の物でなくなってしまうのです。そして、その破産財団に属することになった各種財産の管理・処分権は「破産管財人」に移ることになります。

「破産管財人」とは?

自己破産の申し立てを受けた裁判所は、その処理方法が管財事件となった場合、「破産管財人」を選任します。選任された破産管財人は、破産申立人の財産の調査や免責不許可事由に該当する事実の有無の確認、破産財団に属する財産の換価、破産債権者への配当などの職務を遂行することになります。

なお、破産管財人は弁護士の中から選任されることになっています。

参考:「破産管財人とは?どんな場合に選任され、どんな仕事をするのか?」

「自由財産」とは?

繰り返しになりますが、ある人の申し立てた自己破産が管財事件として処理される場合、その人の所有している財産は破産財団に属することになり、それまで自分の物だった各種財産に関する管理・処分権を失うことになります。しかし、自己破産を申し立てた者が「人間」である場合には、一定の財産に関しては破産財団から除外されることになっています。つまり、その一定の財産は破産申立人の元に残されるのです。これが「自由財産」とわれるものです。

「人間」が破産する場合には自由財産が認められる

何度も言います、自己破産が管財事件となる場合、破産申立人の財産は破産財団に組み込まれることになります。しかしこの際、もしすべての財産が破産財団に取られてしまうとしたらどうなるでしょう?当然、破産申立人は生活することができなくなってしまいます。人間は生きているものですから、生活を続けていくためには必要最低限度の財産が必要です。お金はもちろんのこと、家財道具やその他もろもろの物……。破産した場合でも、これらの物は破産申立人の手元に残されることになっています。これらが、自由財産といわれるものなのです。

法人が破産する場合には自由財産は認められない

自己破産という制度は、なにも「人間」だけが利用できる制度ではありません。法律上「人」とされる「法人」も自己破産することが可能です。景気変動や事業の失敗などの理由により、毎年たくさんの法人(会社など)が破産しています。

しかし、法人は法律上「人」と扱われるとは言っても、いうまでもなく生きているものではありません。このため、人間が自己破産する場合とは異なり、自由財産を認める必要性がないのです。このため、法人破産の場合には自由財産が認められません。

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自由財産とされる物とは?

それでは今度は、どのような物が自由財産とされるのか見てみることにしましょう

法律上、つぎのような物が自由財産として認められています。

自由財産として法律上認められるもの
  • 破産後新しく入手した財産(破産法34条1項)
  • 99万円以下の現金(同条3項1号)
  • 法律上、差し押さえることができない財産(同項2号)
  • 自由財産の拡張が認められた財産(同条4項)
  • 破産管財人が放棄した財産(78条2項)

このように、法律では各種の財産を自由財産として認めています。

それでは、どのような財産が自由財産となるのか、順次具体的に見てみることにしましょう。

自由財産の具体例

どのような財産が自由財産として扱われるかについては、基本的に破産法34条と78条で定められています。

自由財産とされる主な財産は、つぎのような物になります。

①破産後新しく入手した財産(破産法34条1項)

うえでご覧いただいたように、破産財団に属することになる財産は、破産手続開始決定がなされた時点において破産申立人が所有する物とされています。これは逆に言うと、「破産手続開始決定のあと」に得た財産は、破産財団に属することにはならないということです。この財産のことを「新得財産」といいます。

「新得財産」とは?

「新得財産」とは、破産手続き後に破産申立人が新たに取得した財産のことを言います。正確には、裁判所によって「破産手続開始決定」がなされたとき以降に手に入れた財産のことです。この財産は自由財産とされているため、それがいかに高価な財産であったとしても破産財団にとられることはありません。新得財産とされる身近な具体例としては、開始決定後に労働し、支給を受けた「給料」や「ボーナス」などが該当します。

②99万円以下の現金(破産法34条3項1号)

破産法では、自己破産した者がその後の生活をするために必要な資金として、現金99万円までを自由財産として認めています。このため、破産者が現金を持っていたとしても、この金額以下の場合には、破産財団にとられることはありません。

ちなみに、銀行などに預けてある「預貯金」などは、そのままの状態では「現金」の中にカウントされないのが原則です。

③法律上、差し押さえることができない財産(破産法34条3項2号)

破産法では、法律上差し押さえが禁止される財産を自由財産として認めています。このような財産のことを「差し押さえ禁止財産」といいます。

この差し押さえ禁止財産は、さらに「差し押さえ禁止動産」と「差し押さえ禁止債権」に分けることができます。

差し押さえ禁止動産(民事執行法131条)

民事執行法では、つぎのような物を差し押さえ禁止動産として規定しています。

生活必需品

生活必需品に該当する財産は、自由財産となります。衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具などが、これに該当することになります。

また、生活するのに不可欠な家電製品も、基本的には1台目の物に関しては自由財産とされることになっています。例えば、冷蔵庫、テレビ、電子レンジなどは自由財産として手元に残されます。

仕事上、必要となる道具・器具など

仕事上必要不可欠な道具なども自由財産です。

技術者・職人・労務者など主として知的または肉体的な労働に際して必要不可欠な器具などが、これに該当します。

その他の動産

上に掲げたもの以外でも自由財産とされる財産が各種存在します。

たとえば実印、位牌、日記、未発表の著作物などなど、民事執行法ではこれらの物を差し押さえ禁止動産としています。

差し押さえ禁止債権

民事執行法152条やその他の法律によって、差し押さえが禁止される債権があります。

破産申立人が、この差し押さえ禁止債権を持っている場合、差し押さえが禁止されている部分に関しては自由財産とされます。

普段の生活に身近な差し押さえ禁止債権には、主につぎのようなものがあります。

年金

国民年金や厚生年金など公的年金は、全額が差し押さえ禁止とされています。このため、これら年金は、自己破産した場合でもいっさい手放す必要はありません。

給料・ボーナス

自己破産を申し立てる人がサラリーマンなどの場合、会社から給料やボーナスが支給されることがあります。この場合、その4分の3については差し押さえが禁止されています。

つまり、給料やボーナスの額の4分の3は自由財産として手元に残せることになります。逆に言うと、給料などの4分の1に相当する金額については破産財団にとられることになります。

退職金

こちらもサラリーマンなどの場合に問題となるものです。サラリーマンが会社を退職する場合、会社から退職金が支給される場合があります。

この退職金も4分の3が差し押さえ禁止とされているため、その部分に相当する金額が自由財産となります。

ただし、東京地裁など「自由財産拡張基準」(後述)を採用している裁判所においては、一定の場合に上記とは異なった扱いをする可能性があります。たとえば東京地裁の場合においては、これからも会社に勤務し続けるため退職金の支給がまだ現実味を帯びていない状態の場合には、退職金額の8分の7が自由財産となります。

養育費請求権

離婚をするに際して子供を引き取った場合、相手方である元配偶者に対して養育費の支払い請求をする権利が認められます。この養育費に関する請求権に関しては、その2分の1の部分について差し押さえが禁止されます。つまり、養育費の半分は自由財産となります。

扶養請求権

民法上、同居の親族の間などでは相互に扶養する義務を負っています。このため、扶養を必要としている人は、それらの親族に対して扶養請求権を持つことがあります。

この請求権も「養育費請求権」の場合と同様、その2分の1に相当する金額が自由財産とされます。

生活保護で受給している金銭

法律上、生活保護で受給している金銭に関しては、その全額が差し押さえ禁止とされています。このため、自己破産した場合であっても、生活保護費は全額自分の物とすることができます。

 

こちらでは、実際に問題となることの多い財産に関してご紹介しました。実際には、上記以外の財産でも自由財産とされるものは存在します。詳しくは、債務整理に詳しい弁護士や司法書士など法律の専門家に相談するとよいでしょう。

④自由財産の拡張が認められた財産(破産法34条4項)

法律上、当然に自由財産として認められる財産は以上、①から③までのものがメインとなります。これを「本来的自由財産」といいます。破産が管財事件となり、破産申立人の財産が破産財団とされる場合でも、上記のような各財産は自由財産とされるため破産後でも自分の自由に利用したり処分したりすることができます。

それでは、これ以外の財産はどのような場合でも自由財産とされることはないのでしょうか?実は、そうではありません。一定の事情がある場合には、この本来的自由財産以外の財産も自由財産にしてもらえる可能性があるのです。これが「自由財産の拡張(自由財産の範囲の拡張)」です。

自由財産拡張の制度趣旨

人はそれぞれ、異なった事情の中で日々生活しています。ある人は老齢のため、足腰が弱くなり歩行に問題があるかもしれません。またある人は、病気のために特別な器具などが必要かもしれません。つまり、ある人にとっては不要な財産でも、ほかの人にとっては生活するうえで必要不可欠なものである可能性があります。

このように、特別な事情があるため特定の財産を破産申立人の手元に残す必要がある場合には、その財産を破産後も利用させてあげる必要があります。このような場合、その特定の財産を自由財産として破産財団から除外してもえるようにするための制度が必要です。このような時、利用できるのが「自由財産の拡張」という制度なのです。

自動車が自由財産とされる例

たとえば、自動車を例に挙げて考えてみましょう。一定以上の経済的価値のある自動車は、自由財産には含まれません。本来であれば、その自動車は破産財団の財産となり、換価処分されることになります。しかし、もし破産申立人に障害などがあり、自動車が無ければ日常生活に支障が出るような事情がある場合にはどうなるでしょうか?このような場合にまで自動車を処分してしまっては、さすがに非人道的な処分と言わざるを得ないでしょう。このような事情がある場合には、その財産は特別に自由財産とされ、処分の対象から除外されることがあるのです。

自由財産の範囲は拡張してもらえる!

上記①から③に該当しない財産は、基本的には自由財産になりません。そのため、本来であれば破産財団の財産として処分・換価の対象になります。しかし、上述のように特別な事情があるなど一定の場合には、自由財産として認めてもらうことができるのです。ただし、この自由財産の拡張を受けるためには裁判所の許可を得ることが必要です。そして、裁判所がその判断をするに際しては破産管財人の意見を聞かなければならないとされています。

自由財産の拡張が認められる期間について

自由財産の拡張を希望する場合には、一定の期間内に裁判所に申し立てることが必要です。具体的には、破産開始決定時点から起算し、その破産手続開始決定が確定した日から1か月以内に申し立てなければならないのです。ただし、この期間は裁判所の裁量によって伸長することができるとされています。しかし、手続きの迅速な処理のために、自由財産として認めてほしい財産がある場合には破産申し立て後、早い段階で手続きすることが望ましいといえるでしょう。

どんな物が自由財産拡張の対象となるのか?

自由財産拡張基準によって、どのような物が自由財産をされるのかについては、各裁判所の運用によって差異があります。そのため、実際の運用に関しては破産の申し立てを行う管轄地方裁判所に問い合わせる必要があります。

しかし、一般的にはつぎのような財産が拡張の対象となっています。

自由財産拡張の対象となるもの
  • 預貯金や定期預金など
  • 退職金
  • 生命保険などの解約返戻金
  • 自動車
  • 敷金の返還請求権
  • 電話加入権

自由財産拡張の「20万円基準」と「99万円基準」

裁判所に自由財産拡張の申し立てがなされた場合、どのような財産を自由財産として拡張するかについては「20万円基準」と「99万円基準」という2つの基準があります。多くの地方裁判所では、このどちらかの基準で自由財産の拡張を判断しているのです。

「20万円基準」

自由財産の拡張に関する20万円基準とは、うえで述べた拡張の対象となる財産の価値がそれぞれ20万円以下である場合に自由財産として認めようというものです。

つまり、預貯金や保険の解約返戻金、自動車の価値が20万円以下の場合において自由財産拡張の申し立てがあった場合、これらを一律自由財産として認めるという扱いです。ただし退職金に関しては、その8分の1が20万円だった場合においてのみ退職金全額が自由財産とされることになります。

この基準では、自己破産申立人が所持している現金に関してはいっさい考慮されないことになります。

「99万円基準」

これに対して99万円基準の場合には、所持している現金の額も考慮されることになります。つまり、自由財産拡張の申し立てがあった場合には、その申し立ての対象である財産の総額と現金を合計した額が99万円以下である場合、拡張が認められることになります。

99万円基準が採用されている裁判所では、拡張の申し立てのあった各財産が20万円を超えるかどうかなど個別の判断をせず、現金も含め全体で99万円以下であれば拡張が認められるのです。

この2つの基準のうち、実際に破産を申し立てることになる裁判所がどちらを採用しているかについては裁判所に問い合わせるか、債務整理の専門家に相談することで知ることができます。

裁判所の許可が必要

本来は自由財産に含まれないはずの財産を自由財産とする「自由財産の拡張」をするためには、基本的に裁判所の許可が必要となります(法律の規定では、裁判所の職権などでも自由財産の拡張をすることができることになってはいますが、実際になされる事例はあまり多くはないようです)。自由財産拡張の申し立てがあった場合、どのような事情があるときに、どのような財産が自由財産として認めるのかは、各裁判所がケースバイケースで判断することになります。

一定の財産を定型的に自由財産とする裁判所もある

ここで、おさらいしておきましょう。法律上、何らの手続きを要せず当然に自由財産とされる財産がありましたね。それが本来的自由財産です。これは、一定の範囲の財産を自動的に自由財産とするものでした。実は、これと類似したものに「自由財産拡張基準(財産換価基準)」と呼ばれるものがあります。これは東京地裁など一部の裁判所で採用されている手法で、各裁判所で定めている一定の財産に属する物に関しては、当然に自由財産として拡張することが認めているのです。

「自由財産拡張基準」とは?

本来的自由財産とは違って法律上当然には自由財産にされない財産でも、やはりどうしても、その人の生活に必要不可欠な財産があります。自己破産した後にも、人は生きていかなければなりません。そのためには、生命保険を解約されては困る場合もあるでしょうし、生活の「足」として自動車がどうしても必要な場合もあるでしょう。

つまり、本来的自由財産とされない財産でも、生活するうえで必要不可欠とされる可能性が高いと思われる財産については自由財産として認めてあげる必要があるのです。このため一部の裁判所では、ある特定の財産について、その経済的価値が一定以下であることなどを条件として一律自由財産とする運用をしています。そして、その判断基準のことを「自由財産拡張基準」または「財産換価基準」といいます。

当然に自由財産の拡張が認められる財産(東京地裁の場合)

一例として、東京地裁での扱いをご紹介します。

東京地裁では、主につぎのような財産について自由財産の拡張が認められています。

これらに該当する財産がある場合には、裁判所に対してわざわざ自由財産拡張の申し立てをしなくても、その財産は当然に自由財産として扱われることになります。

預貯金の合計額が20万円以下である場合

所有している銀行などの口座すべての残高の合計額が20万円以下の場合、それらの預貯金は自由財産として処分の対象から外されることになります。

生命保険解約返戻金が20万円以下である場合

生命保険の解約返戻金が20万円以下である場合、生命保険は解約することを要せず、返戻金も自由財産として手元に残されることになります。ただし、生命保険に限らずその他の保険がある場合には、それらすべての解約返戻金の合計額が20万円以下である必要があります。

現時点で退職した場合の退職金の8分の1が20万円以下である場合

現時点で退職した場合に支給される退職金見込額の8分の1が20万円以下の場合、退職金は全額が自由財産とされ、破産財団に帰属することはありません。

つまり、現時点で退職した場合の退職金見込額が160万円以下である場合には、退職金は自由財産として扱われることになります。

退職金見込額が20万円を超える場合には、その8分の7に相当する金額

現時点での退職金見込額が20万円を超える場合には、その8分の7に相当する金額が自由財産となります。たとえば、退職金見込額が800万円の場合、その8分の7に該当する700万円が自由財産とされます。このため、800万円のうち100万円だけが破産財団に属することになります。

自動車の価値が20万円以下である場合

所有している自動車の経済的価値が20万円以下である場合、その自動車は自由財産となり処分の対象外となります。そのため、自己破産後も以前と同様に使用することができるようになります。

⑤破産管財人が放棄した財産(破産法78条2項)

本来の扱いでは破産財団に属することになる財産が、何らかの事情があるために破産管財人によって放棄されることがあります。この場合、その財産は破産財団から除外されることになります。つまり、破産しても自分の手元に残されることになるのです。

裁判所の許可が必要

破産管財人が、破産財団に属する権利を放棄する場合には裁判所の許可が必要とされています。裁判所は破産管財人の意見を聞き、妥当と判断した場合には権利の放棄を許可することになります。

放棄される財産とは?

本来、破産財団に属するはずの財産が破産管財人によって放棄される場合は、それなりの理由がある場合に限られます。具体的には、つぎのようなケースが考えられます。

  • そもそも、その財産に経済的価値がない
  • 経済的価値のある財産ではあるが、それを換金するのに必要以上の費用や時間がかかる

自由財産にならない財産は処分される!

ここまでご覧いただいたように、自由財産として認められるものには各種の財産があります。これらに該当する財産は、破産による処分の対象から除外されることになる財産、つまり自分の手元に残される財産です。

しかしこれは逆に言うと、自由財産として認められない上記以外の財産はすべて破産財団のものとなるということです。つまり、それらの財産は自己破産することにより、処分されるということを意味します。

自己破産することで影響を受ける財産について

一定以上の財産があるため自己破産が管財事件となった場合でも、自由財産と認められる財産は自分の手元に残すことが可能です。しかし、それ以外の財産については処分され、自分の手元に残すことはできません。

このように、破産することで処分される各種財産に関し、実務において問題となることの多い財産をご紹介しましょう。自己破産する人が以下のような財産を所有している場合には、各財産が処分されてしまうことになるということに関して、あらかじめ理解しておくことが必要です。

99万円を超える現金

自由財産の項目でご紹介したように、99万円までの現金は破産財団にとられることはありません。しかし、これを超えて現金を持っている場合には、その超えている金額は破産財団に帰属することになります。

マイホームなどの不動産

自己破産する人がマイホームや各種不動産を所有している場合、それらは「破産手続」によって処分・換価されることになります。このため、破産申立人が自分の所有するマイホームに住んでいる場合には転居する必要が生じます。破産を申し立てたからといって、すぐに退去する必要があるわけではありませんが、近い将来引っ越しすることになることを覚悟しておく必要があります。引越しには費用も掛かりますので、その備えも必要です。

生命保険の解約返戻金

積み立て型の生命保険に加入している場合、保険を解約すると「解約返戻金」が戻ってくることがあります。自己破産する場合には、この解約返戻金は財産とみなされるため、その額が一定以上高額になる場合には問題となることがあります。標準的な扱いとしては、返戻金が20万円を超える場合には破産財団のものとされることになることが多いようです。

ただし、解約返戻金を破産財団のものとするためには、当然その前提として生命保険の解約が必要になります。しかしこの場合、破産申立人が病気を抱えていたり年齢的な問題など種々の事情によって、この生命保険を解約してしまうとあとで再加入できなくなる場合があります。このような事情がある場合には、解約返戻金は自由財産の拡張によって破産財団から除外される可能性があります。

退職金

破産申立人がサラリーマンなどの場合、退職する際に会社から退職金が支給されることがあります。この退職金も立派な財産です。そのため、現時点における退職金見込額に関しては、その4分の1に相当する金額が破産財団に帰属することになります。ただし、この扱いに関しては裁判所によって、それぞれ異なる運用をしている可能性もあります。詳しくは、住所地を管轄する地方裁判所に確認する必要があります。

自動車

自己破産する人が一定以上高価な自動車を所有している場合、管財事件においてその自動車は処分、換金されることになります。一般的な地方裁判所では、自動車の価値が20万円を超える場合、このような扱いとしています。

ただし、この自動車も破産申立人の生活に不可欠であるなどの事情がある場合には、自由財産拡張の対象となる可能性があります。

ただし、自動車にローンが残っている場合には、自己破産に際してローン会社によって回収されることになるので注意が必要です。

まとめ

今回は、「自由財産」と「破産財団」などについて解説させていただきました。

自己破産した場合に、破産を申し立てた人に一定以上の財産があるケースでは、破産の処理方法が「管財事件」となります。この場合、破産申立人の所有している財産は基本的に破産財団に属することになり、それまで自分の財産だった物が換価・処分されることになります。

しかし、自己破産を申し立てた者が法人でなく「人間」である場合には「自由財産」が認められます。自己破産をした場合でも、人間は生きていかなければならないため、生活に必要な一定の範囲内の財産を手元に残してあげる必要があるからです。

この「自由財産」には、いくつかの種類がありますが、法律上当然に認められるもの以外でも特別な事情がある場合には、特定の財産を処分の対象から除外してもらうことが可能です。それが、「自由財産の拡張」という制度です。裁判所の許可を得ることが条件とはなりますが、自由財産の拡張が認められた場合、その財産は手元に残すことが可能となるのです。

自己破産が管財事件となりそうな場合には、これらの知識を活用し、少しでも多くの財産を手元に残せるようにしていただければ幸いです。

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